つづく日々(人を思い出す)

含蓄もなく、滋味もなく、大きな事件も起こらない、自分のあやふやな記憶の中の日々と人々とを散漫に思い出して書きます。

2016-01-01から1年間の記事一覧

祖父への贈り物のこと

祖父にブルーレイレコーダーを贈った。今まで使っていたものが壊れておじいちゃんが困っていると母から聞いたから。 ドラマが好きだが夜9時には床についてしまう祖父にとって、レコーダーはまさしく必需品だった。病を患って、歩くことが年々難しくなってい…

場所と飲/喫みもののこと

知り合いの中国人から面白いことを聞いた。曰く、家から数駅の場所に遊園地があるのだが、そこの年間パスポートを持っているという。よほどその遊園地が好きなのかと聞くと、特に思い入れがあるわけではないらしい。 彼が遊園地に赴くタイミングは、観光にき…

みそ汁のこと

みそ汁からは、その人の家庭が見えてくる。本当に、家によってみそ汁のバリエーションは様々だ。ある家庭で普通だと思っていた具材が、あっちの家庭では珍しかったり、ある人のこだわりが、別の人には全く理解されなかったり、そういうことが往々にしてある…

庭の水やりのこと

夏休みは水やりの日々。子どもの頃の夏休みは、家でだらだら過ごしていると、さまざまな「おてつだい」が降ってきて、それをイヤイヤこなしていた。朝、庭の植物に水やりをするのも、おてつだいのひとつであった。 とぐろを巻いたホースを引っぱり出し、蛇口…

久しく忘れているものたちのこと

ビー玉の味 おはじきの味 手の平についた草のしる セロハンテープを顔に貼って、剥がした後、あぶらがとられてつっぱるかんじ ちいさな抜け道に落ちてるヘビの抜けがら 新聞紙でつくった剣の硬さ 気が重いピアノのおけいこ プールのときの、痛いからあんまり…

はなむけの酒

この散文は11月の寒い夜に書き始められた。なんとはなしに書こうかと思った。3月に書けばよいのに、年の暮れから書き始めているのは酔狂である。 ある事柄について語るとき、中心を掴むよりも、周縁をなぞることで、そのものの性質が浮かび上がる、そういう…

カセットテープのこと

「テープに吹き込む」って考えてみると不思議な表現だ。テープに耳があって、そこに語りかけるよう。 ビデオは「録る」、CDになると「焼く」という言葉になる。レコードはどうだったんだろう。「刻む」? こうやって並べてみると、やはり、吹き込むという言…

うさぎのかじりあとのこと

実家に帰ると、ふと椅子の上に置いてあるクロエのバッグが目についた。経年変化で革の色は濃くなり、デザインも今風ではないから、ごく古いものだろう。そのバッグに一箇所、七宝焼きのような青い円形の装飾が付けられている。聞けば、うさぎにバッグをかじ…

身支度のこと

年末年始の休日、冬の朝は、他の季節よりも少しゆっくり身支度をしてみる。 昨夜の作り置きをあたため、白米と目玉焼き、佃煮とお味噌汁で食べる。ざっと洗い物をやっつける。 お風呂に入る。設定温度は40度だけどそれより熱く感じる。 髭を剃る。ドライヤー…