つづく日々(人を思い出す)

含蓄もなく、滋味もなく、大きな事件も起こらない、自分のあやふやな記憶の中の日々と人々とを散漫に思い出して書きます。

2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

装丁のこと

書物、言語、詩歌、文学、僕の家族は何なんらかの形で、そういったことを生業にしたり、趣味にしたり、ライフワークにしている。祖父もそうだった。やはり人の一生に言葉というものは欠かせないようである。 僕の家には昔から途方もない数の本があった。 玄…

相貌のこと

人の顔というのは、よく覚えているようで実のところうまく捕らえられていないものだ。夜のソファでひとり、はてあの人はどんな目鼻立ちだったろうと頭で考えても、はっきりとした輪郭を描くことは難しい。集中して人の顔を思い浮かべれば、限りなく精緻な靄…

紙箱の水槽のこと

男は久しぶりに実家に帰り、部屋の整理などする。部屋の掃除というのは、古書店で気になっていた本を偶然見つけるような驚きと楽しさをもって、懐かしいものとたくさん再会するものだ。彼がその日見つけたのは黒い紙箱だった。 カーテンを閉め切った少し薄暗…