つづく日々(人を思い出す)

含蓄もなく、滋味もなく、大きな事件も起こらない、自分のあやふやな記憶の中の日々と人々とを散漫に思い出して書きます。

うなぎのこと

年始に家族でうなぎを食べた。これはその報告です。

 

1月の風が鼻と耳をさす中、通りを歩く。行きつけの鰻屋に入る。店内はあたたかい。座布団の上にあぐらを書いて品書きを見る。あたたかいお茶が運ばれてくる。注文をする。

 

まずうなぎの骨せんべいと肝焼きが出てくる。これを熱燗と一緒に楽しむ。骨せんべいをぱりぱり音をたてて、日本酒を飲む。あっさりしていて、でも濃厚なうなぎの肝焼きをつまみながら、やはり日本酒を飲む。

 

次にう巻きがくる。黒い皿、黄色い卵、大葉の緑、しょうがの白。そこにうなぎのたれをかけて、ちょっとずつ食べる。卵はとても繊細で、ほろほろと崩れる。中にうなぎの身が入っている。途中でしょうがをつまむ。日本酒を飲む。日本酒がなくなる。

 

うな重が来る。焦らずにまず肝吸いを飲む。吸い口のゆずの香りがなんとも言えない。そして蓋をあけ、うなぎと対面する。たれの染み込んだご飯の上で、うなぎが光っている。食べる。おもわずほころぶ。山椒をかける。食べる。おもわずほころぶ。気まぐれにお新香をつまむ。肝吸いに入っている肝を食べる。またうなぎを食べる......。

 

お腹がいっぱいになった帰り道は、不思議とあまり寒くない。