つづく日々(人を思い出す)

含蓄もなく、滋味もなく、大きな事件も起こらない、自分のあやふやな記憶の中の日々と人々とを散漫に思い出して書きます。

小学校の帰り道のこと

転校先の小学校で、いつしか一緒に帰る友達ができていた。男女6人のグループ。ハツミくんという子がリーダーだった。

僕たちは学校が終わると、誰ともなしに集まり、一緒に下校した。そして、必ず途中で公園に立ち寄った。その公園は高台の上にあるので、長い階段を登っていかなければいけない。 

階段を登り切ると景色がひらける。赤と黒、それから水色のランドセルが、芝生の上ににぎやかに放り投げられる。座り込んで、あるいは寝転んで、住宅地を見下ろしながら、とりとめもないことを喋る。

そこで女の子が持ってきたポッキーをみんなで食べた。学校にお菓子を持ってきてはいけないのに、彼女はそのお菓子を、今日の1時間目からずうっとランドセルに入れていたのだ。教科書を取り出すときにバレなかっただろうか。僕だったら一日中どきどきしちゃうだろうな。みんなで校則を破る背徳感と連帯感は悪い気がしなかった。

幸か不幸か、僕たちは男3人、女3人という構成で下校していた。小学生といっても、やはり恋愛感情が生まれる。ある日の休み時間にも、僕はハツミくんからそういう話を聞かされたものだ。

その後、学年は進み、なぜだか僕たちはばらばらになった。6年生になる頃には、つき合う友達も全く変わってしまった。

その後、ハツミくんはただひとり私立の中学校に進んだ。リョーヤのことが好きだったイシイさんは引っ越した。他はどうなったんだっけ。舌足らずのスズキさんは?勝気なカエデさんは……。うまく思い出せない。あるいは知らないんだろう。そんなものだ、あの日のポッキーの味だって思い出せないんだから。