つづく日々(人を思い出す)

含蓄もなく、滋味もなく、大きな事件も起こらない、自分のあやふやな記憶の中の日々と人々とを散漫に思い出して書きます。

借りたCDのこと

雨の日に貸してもらったCDをかけて毛布の中でまどろむ

 

偶然にも七五調になっているとうれしいですね。

 

僕は何を隠そう、音楽を聞かない方の人間だ。小学校から大学に至るまで、1枚のCDも買ったことがないし、TSUTAYAでCDを借りることもしなかった。

 

そんなわけだから、20歳くらいのころ、音楽を聞いてないということが小さなささくれになっていた。同年代と音楽の話ができない。しかも、教養がないような感じがする。

 

いろいろな偶然が重なって、大学を出るまえに、何人かの人が僕にCDを貸してくれた。空っぽだったiTunesが少し賑やかになった。そして僕は大学を出て、遠くに引っ越した。貸してくれた人たちとは離れてしまった。

 

寂しさから、僕は音楽を聴くようになった。段ボール箱から古いイヤホンを引っ張り出す。駅や、公園、坂道、交差点、台所、寝室、再生ボタンを押すと、どこにいても、その曲を貸してくれた人の顔が思い浮かぶ。

 

CDを貸してくれた友達の中に、ひとりだけ、自作の曲を貸してくれたやつがいた。アコースティックギターと口笛だけでできた曲。サビの部分で高音になると、口笛が少しかすれる。いつも演奏してたのと同じだ。仕事からの帰り道、夕方の駅でへたへたになってる時にそういうのを聴くと、嬉しさと懐かしさと寂しさが混じってだめなんだ、ほんとに。