つづく日々(人を思い出す)

含蓄もなく、滋味もなく、大きな事件も起こらない、自分のあやふやな記憶の中の日々と人々とを散漫に思い出して書きます。

サンドイッチのこと

もう、しばらくサンドイッチをつくっていない。

 

僕は朝食に好んでサンドイッチをつくる(あるいは「つくっていた」)。といっても手の凝ったものではなくて、簡単なやつだ。

 

最後にサンドイッチをつくった一番近い記憶は、数ヶ月前、冬の日だ。底冷えする朝、目が覚めたら、ちょっと頑張って布団から出る。台所の床は冷たいから、厚手のソックスをはく。誕生日にもらったカラフルなやつを。

 

まずパンをトースターに入れ、その横でベーコンを焼き始める。ベーコンが透明になってきたら、たまごを落として塩胡椒をする。その隣でレタスを洗う(冬は寒いからお湯で洗おう)。たまごに火が通ってきたら水を加えて蓋をする。焼けたパンにバターを塗る(ときどきチーズも加えて)。忘れずにトマトを切る。そろそろ卵がいい具合になっている。あとは慎重に重ねていくだけ。塩加減やマヨネーズの配分は、慣れていないとうまくいかない。

 

いつだったか、サンドイッチを作った時に「朝、起きたら朝食ができているのはすごく幸せ」と言われたような覚えがある。僕もそう思う。お魚とお味噌汁のにおいで目が覚めたりして、そういうのはすごくうれしい。「おいしい」って言いながら、「今朝も寒い!」って少し悪態つきながら食べる。

でも、「目が覚めたらおいしい朝食ができている幸せ」だけではなく、「誰かのために早起きして朝食をつくる幸せ」も大きい気がする。

 

引っ越して、やらなくてはいけないことが落ち着いて、ほんのちょっぴり時間的に余裕が出てきて、でも精神的には余裕は全くなく、最近のことなのに、最後にサンドイッチを作ったときから、なんだかすごく時間が経ちすぎているように思える。だから、いろいろなことを思い出そうする。つまらないけど大切なこと、小さな言葉、変なクセ、ささやかな符号とか。

具をのせる順番はどうだったっけ?チーズ、トマト、ベーコン、たまご、レタス............。